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女形の品格と色気を探求せよ④うしろ姿

昭和初期に発行され、文化人の間で大評判になった「日本の藝談」。伝説のタカラジェンヌ春日野八千代御大もこの本を写して芸を勉強したそうです。

国立国会図書館デジタルコレクション - 日本の芸談


この中から今回は「うしろ姿」について触れられているところをピックアップし、女形の品格と色気について勉強していきます。

まず、著者の平山氏はこう断言しています。
「うしろ姿というものはとかくぞんざいになり易いのだが、うしろ姿によって藝の力の奥が知られる」と。
これはどういうことかというと、表を向いているときは小手先の技術でそれなりにごまかしがきくけれども、お客様に背中を見せたとたん、一切のテクニックが無意味になるということ。役者ならば役が死に、役者その人のふだんの姿がありのまま、むき出しになってしまうのです。役者が役になりきっているときに「ありのままの姿みせるのよ」ではいけません。ではどうすれば「うしろ姿」が人に見せられるレベルになるのか。
うしろ姿は、付け焼き刃の技術ではどうすることもできない。芸そのものが「底力」として身に付いていないと魅力的にはなりません。ふだんの鍛錬と舞台度胸の落ち着きと身構えの訓練を重ねているうちに、いつのまにか表現できるようになるものなんだとか。
殊に女形のうしろ姿で一番大事なのがえりあし。えりあしさえ女らしくなっていれば、もうそれだけでOKレベルです。著者は「どんなときでも、相手となる男役に、自分のえりあしをみせるような座り方、身のこなしさえすれば、その人その人の持ち合わせている色気を十二分に発揮しえられるものだ」と断言しています。また、「えりあしというものは、女の女らしさを見せる唯一の武器だと思えばよし」とさえ言っています。どんだけえりあしフェチなんだ、お前。
演技の上で気の強い女を表現する際は、決して客や相手役にえりあしを見せないんだそう。そして相手に好意を見せる演技の際には背中をフル活用し、えりあしをみせる。ポイントは正面を見据えないこと。
 今の暮らしに置き換えてみたんですけれど、「好きな相手を見つめる」っていうのはテクニックとしてモテる女の子がよくやる方法じゃないですか。上目使いする、とかそういうやつ。でも「見ない」っていうのも恥じらいがあって、上等なテクニックだなと思いましたね。見ないかわりにえりあしで隙を見せつけるわけでしょ。うなじやえりあしのお手入れを抜かり無くしておく必要がありそうですね。著者は「えりあしひとつの使い方で、喜怒哀楽、さまざまな表情が出来るのだと思えばよし」っていってるくらいです。

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ちょっと前に話題になった「女の合コンテクニック」を集めたこの歌。
テクニックとしては①ゆれるアクセ、白いレースで鎖骨のよく出た服を着る②3つの首を出す(首、手首、足首)③生足④上目づかい⑤脇をしめ、グラスは内回りで乾杯する⑥左8度で好きな相手を見つめる・・・などめっちゃ小手先のテクニックを使いまくっているのですが、これらカサネテクの積み重ねを、えりあしがたったのひとつで軽やかにぶちこわす可能性、大いにあります。しかしその可能性を持っているのは、やはり内面の底力をこつこつと積み重ねて身につけた人なのだと考えると、表面か内面かの違いで、どっちにしてもカサネテクじゃねえか!と思ったりもします。