とりどり.com

宝塚や本、映画、旅行のことなど。

2016-01-01から1年間の記事一覧

朝海ひかるの絶望と憂鬱

憂鬱を背負った瞳に、光が入る。 「神よ、私は自分が罪深い人間であることは知っていますーーー」 男はふらふらと歩き、背をまるめて両手をじっと見つめる。そして気づく。 「神よ、これがあなたの答えなのか」。 端正な顔が苦しげにもがく。かすかに眉が歪…

東宝エリザベートにおけるヘレネ嬢の健気さについて

東宝ミュージカル・エリザベートの名古屋公演が始まった。チケットを手に入れることができなかった私は、12月にDVDが発売されるのをハンカチを噛み締めつつ待つしかない。時を遡るけれど、梅田芸術劇場での公演は2度観ることができた。そこで気がついたのが…

花總まりは帝劇の女王なのですから

中学2年の冬のことだ。テスト期間中で昼から家に戻れることになり、ご飯を食べようとカップ焼きそばにお湯を入れて待っていたとき、何気なくテレビをザッピングしたらNHKのBS2(現在はプレミアム)にきらびやかな画面が映った。しかし、お昼のワイドニュー…

パタリロ、無念の舞台化へ

宝塚OGの樹里咲穂はある日、自分が持っているテレビ番組で現・宙組トップスター朝夏まなとにこう切り出した。 「(あんたには)バンコランやってほしい」。 バンコランとは、少女ギャグ漫画界の雄「パタリロ」に出てくる超絶美形スパイだ。 樹里の台詞は、い…

スカートに感情を乗せる星奈優里

宝塚には娘役芸というものがある。男役と並ぶときに膝を折る、ボリュームのあるスカートにつまずかないよう裾を操作する、横顔を美しく見せるために首筋を浮き出させる、リフトは相手役の負担をかけないように軽く乗る。私の把握しているものなど、きっと知…

筆箱採集帳/ブング・ジャム

私は昔から雑誌のカバンの中身特集やお家訪問特集、本棚特集といった「他人の生活の中身を見せてもらう」企画にしこたま弱い。そして文房具が大好きだ。 だから4年前にこの本を見つけたとき、かなり鼻息が荒かった。 小学校と中学校では学校の購買部(クラス…

少年の名はジルベール/竹宮惠子

漫画家・竹宮惠子の自伝エッセイです。竹宮は漫画家として上京後、萩尾望都と「大泉サロン」に住んで漫画を描き、増山法恵から文化的・芸術的教養を伝授されながら内面を磨いていきます。漫画家として経験を積むなか、彼女は自分の本当に描きたいテーマが発…

ジルベールと天沢聖司を操る早霧せいな

「ふら」という言葉がある。落語家の古今亭志ん朝が雑誌のインタビューにて父の古今亭志ん生について語ったときに発言し、広まった言葉と言われている。 落語の場合のふらとは「その人でしか出せない独特のおかしみ」を指す。落語家にとっておかしみは個性だ…