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クソかわいい悪役 クリストフ・ヴァルツ

 

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小さい頃は正義の味方が大好きだったけれど、あるとき悪役に魅力を感じるようになった。それに気づくと同時に、私の青春はとっくに過ぎていたと悟った。

私は正直者ではないし、嘘もつく。正しいことばかりしてきた人間じゃない。人を裏切ったことがあり、そのときの後ろめたさを今でもしばしば思い出す。10代後半までは、正義の味方のような生き方をすると思っていた。しかし、20代に入って自分の脆さが明らかになると、私は100パーセント善人ではないことを思い知る。悪役や脇役にぐっと心が惹かれるのは、私が大人になったと自分で気づいてしまったからだろう、おそらく。人に対してやましい思いを抱えたまま、正直者に憧れる自分のみじめったらしさに打ちひしがれているとき、映画に出てくるぶっ飛んだ数々の悪役は、私に希望をくれた。


中でもお気に入りなのは、クリストフ・ヴァルツが演じる悪役だ。愛され度ナンバーワン・悪役界をしょって立つ、スーパーアイドル。彼の演じる悪役はそんなキャラばかり。007シリーズ「スペクター」ではフランツ・オーベルハウザー(ブロフェルド)という、ジェームズ・ボンドと血のつながらない兄弟かつ悪の親玉を、実話を元にしたティム・バートンの作品「ビッグ・アイズ」では妻の絵を自分が描いたと主張し、執拗に妻をおいかけるキ○ガイ、ウォルター・キーンを熱演。

私が一番好きなのは、タランティーノ作品「イングロリアス・バスターズ」で演じたナチスの親衛隊将校・ハンス・ランダというド級のクズ。
悪どくて、容赦なくて、自分中心で、本心が読めない。そしていっつもニコニコしているんだけど、突拍子もなく真顔になって相手をドキっとさせる。絶対に賢いのにバカっぽいのもいい。「道化」ってやつである。

 

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このシーンが最高。

「うぅ〜♪ざっつ あ びんご〜!」とウキウキ言ったあと、身体をふりふりし、眉を少し上げてみせたと思ったら、いきなり眉を寄せて
「ところで(英語で)that's a bingoって表現で合ってる?」ってブラピに尋ねる。
「ビンゴだけでいいよ」とブラピ(敵役)に教えられると、超嬉しそうに
「っびんごぅ〜!超たのし〜!」って言うのだ。

かわいい、超かわいい。悪役で憎むべき存在なのに、こんなにも愛おしい。
世の中には少数ながらクズでしょうもないのに許される奴というのが存在する。他人に迷惑をかけまくってるのに、なぜか愛されるのだ。もちろん彼らも痛い目には合っている。私は、こういう人には憧れないし、今でもなれるものであれば、正直に、全うに生きていきたいと思うけれど、それでも、クリストフ・ヴァルツが演じるような愛されるクズ(もちろん犯罪はダメだけど)に、ちょっとだけでもいいから寛容さを持って生きていきたい。それが正義の味方でなくなった、今の私の目標だ。