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女形の品格と色気を探求せよ②手の表情

先の記事に続き、「日本の藝談」から、女形の品格と色気をどうにかして身につけたいと願う人のための、考察をば。

国立国会図書館デジタルコレクション - 日本の芸談

 

①でも引用致しましたが、この本にはこんなことが書かれております。

“踊りと芝居はすべて手に始まって足がきまり、腰が据わってから肩がものを言い始め、やがては眼が使えるようになる。”

ということで、順番に、まずは「手」からやっていきます。

手は、仕草の代表ともいえるパーツです。ゆえに女形の手について言及している人もたくさんいるはず。自分を指差すときに手の甲を自身の身体側、掌を相手側に向けて、人差し指を反らせながら指差す、みたいなのが典型パターンのひとつ。ただ、これを現代に応用するのはなかなか浮世離れしすぎているので、会話のなかで、「私ですか?」というシーンに遭遇したときは、片手を開いて、真ん中の3本を揃えて、自分の胸元に掌をゆっくりひっつけるとかのが良いと思います。脇は必ず締めること。

「日本の藝談」にも、手の指はその働かせ具合によっていろいろな表情をもたせられると書かれています。歌舞伎の世界では指先の働かせ方によって表現する役柄も変わってくるみたい。例えば、「のばした指の小指だけを一寸かがめる」と若衆に、「指の間を一杯にはなして広げる」と奴になるのとのこと。気になる女形の指づかいについては「指を十分に反らせること」と書かれていました。
 もちろん女形にもいろいろあります。「日本の藝談」にはこんな具体例がありました。

ケース:後れ毛をかきあげる。

・(掌を相手に向け)人差し指1本を伸ばしたままでかきあげると、手に油(ワックス)がつくのを嫌がっている風情が出る。
・手の甲を外へ向け、くすり指と小指を使ってかきあげれば、恥ずかしがりの風情が見える。
・3本の指を折り曲げて親指と人差し指だけでかきあげれば、年増女の風情になる。

これを読んで、何も考えずにがさっとすくうように後れ毛をかきあげていた私、猛省しております。一番上の「手に油がつくのを嫌がっている」ってどんな性格なのかしら?こなれ感が出ている感じ?こなれ感ゆえの色気を出したいときに使うんでしょうかね。

ケース2:袖いぢり

袖をいぢることで、何気なく色気を感じさせることも可能です。しかしながら、これをわざわざやると、返って「何気なさ」(手持ち無沙汰感)が大げさになってしまう。あくまでも「偶然の身のこなし」と思わせる必要があります。何かものを引き寄せたり、手を差し伸ばすときに、必ず片手で片手の袖をかかえるようにするか、くちびるでくわえるようにする。しかし、触るものが何もないのに片手でいちいち袖を抱えてしまうと、はしたなく、ぞんざいでしまりのない女に見えてしまう。
今の暮らしにおいて、和装のように袖が長くついているものなんてほとんどないし、まして口で袖をくわえる機会もほとんどないと思います。しかし「よかれと思って仕草を執拗なまでにくり返す」と返って下品に見える、というのはなるほど納得なだと思いました。それにしてもはしたなく、ぞんざいでしまりがない女って・・・けちょんけちょんですよね(笑)。要は女を出しすぎると不快感しかないぞってこと? 

それからこの本には「ふところ手」についても詳しく記載されているんです。ふところ手っていうのは、和装したとき、手を袖から出さずに懐に入れておくことなんですが、これは今の日常生活においてまったく使えそうもないので割愛します。