とりどり.com

宝塚や本、映画、旅行のことなど。

女形の品格と色気を探求せよ①はじめに

女の色気と品を出すためには?といったテーマのコラムを読んでいると、結構な確率で「歌舞伎の女形をお手本にしましょう〜」みたいな内容に出くわします。それらの記事にはたいていこんなことが書かれています。「女形は男性が女性を演じる。彼らは女性の所作を研究しつくしているので、普通の女性よりも女らしい立ち居振る舞いができる」。

言うまでもなく、この記事を読もうと思った人にとって必要な情報は「具体的にどうすれば『女形のような』色気と品が身に付くのか」ということです。けれど多くの記事はこの後にこう続きます。「所作はゆっくりと。指先まで気を配りましょう。流し目をするのはいかが?流し目の仕方は〜〜」。 
 品良く見せたいと思う女性なら、所作をゆっくりすること(動作に余裕を持つこと)、指先まで気を使うことなんて、すぐ思いつくでしょうよ。コラムを読むまでもないはずです。

そしてその次。やっかいなのは「流し目」です。流し目を極めた人の視線というのが、尋常じゃない威力を発揮するのは事実。「流し目の一本釣り」という言葉があるくらいです。しかし、「魅力的な流し目」ってめっちゃムズイと私は思います。付け焼き刃な知識と安直な振る舞いで流し目を試みると、大やけどをする可能性が高い。なぜか。

 昭和17年に発行され、当時大ヒットを飛ばした書物「日本の藝談」にはこんなことが書いてあります。

国立国会図書館デジタルコレクション - 日本の芸談

 

“踊りと芝居はすべて手に始まって足がきまり、腰が据わってから肩がものを言い始め、やがては眼が使えるようになる。”

つまり、役者でさえ眼が武器になるのは最後ってことです。もちろん「眼(視線の配り方)」の才能のある人は別ですよ。なんの訓練をせずとも、魅力的な流し目が無意識的に出来る人はいるでしょう。でもだいたいは失敗に終わります。
だから、色っぽく見せようとして流し目連発するのって超危険。「なんかヤベエやつ」と思われかねません。

さて、私は「日本の藝談」の話がしたいのです。この本は、当時(昭和初期)の新聞記者・平山蘆江氏が、役者の心得を書いた本なのですが、 なかなか興味深い内容が書かれているのです。「役者としての所作のポイント」が主観的な文章や抽象的な文章では決して書かれていない。手の置き方、歩き方、視線の配り方などが具体的な仕草の方法として丹念に書かれています。伝説のタカラジェンヌ春日野八千代がかつて、この本を写して研究していたというのを知り、私も読んでみたわけなのですが、「これ、役者だけじゃなくて、一般人でも応用できるかもしれないな」と思いました。

そこで、この「日本の藝談」の中から、女形の仕草について書かれた項目だけに注目し、抜粋・まとめてみようと思います。何十年も前に書かれている本ですから、今となってはもう使い物にならない所作の作法もあるかも知れませんが、少なくとも女形の色気と品格を身に付けたい女性にとっては、「所作はゆっくりと」「たおやかさを意識して」なんていう超・抽象的なアドバイスよりはだいぶ参考になるものだと思います。  私が実践できるかはさておき。

少女時代のユナと中島みゆき+愛希れいか

 

この記事を見て思ったことがあります。

news.kstyle.com

 

注目すべきは一番上のグラビア。

f:id:toridoriki:20170129150056j:plain

 

私はこの写真にとっても既視感がありました。構図とかじゃなくて、女性の表情に、です。

f:id:toridoriki:20170129150302j:plain

けっこう似てないでしょうか?このときの中島みゆきはユナよりも年上ですが、イイ線いっている!と思うんだな。

ちなみに中島みゆきの若い頃はなかなかかわいい。前髪も今の韓国女子っぽくないですか?くるくるで薄い。

f:id:toridoriki:20170129150623j:plain

 

中島みゆきの若い頃は、現・月組娘役トップの愛希れいかに似ているなとも思います。

f:id:toridoriki:20170619123326j:plain

 

 

ところで、リンクを貼った「Kスタイル」というサイト、韓国の芸能情報がチェックできるのですが、文章を韓国語から日本語に直訳しているためか、文章表現が日本のそれとは違っていて興味深いのです。例えば「女性の美貌」を取り上げる際の表現。

・絶頂の美貌を誇る(上記の記事。少女時代のユナに対して)
・魅惑的な魅力が際立つ(「国民の初恋」というコピーを持つmiss A スジに対して)
(魅惑的な魅力って・・・魅惑力際立つ、ではダメだったのだろうか)

・欠点のない美貌(同じく、miss A スジに対して)
・完璧なボディラインを誇示した(AOAというガールズグループのユナに対して)
・ミステリアスな魅力が際立つ(女優・キョンスジンに対して)
・思わず見とれてしまう歴代級の美貌(女優・キム・テヒに対して)
・絶頂の美貌(女優・キム・ヒソンに対して)
・卓越した優雅さで名実ともに春の女神であることを証明(女優・ハ・ジウォンに対して)

これはあくまでも一部です。

 

表現のハイパーインフレが過ぎますね。
日本なら「文章を過大に書きすぎると逆にチープに感じられるので、過大表現は極力控えよ」と赤が入るはずなのですが、韓国はどうやらそうではないのかもしれない。三島由紀夫の「憂国」を韓国の作家がパクった問題がかつて起きましたが、その際も韓国の作家サイドは「我々の方が文章的に優れている」といって否定していました。(後に認めて謝罪しています。めっちゃ叩かれていました。)文化の違いなのでしょうが、彼女(韓国の作家)の文が改めて日本語に直されたのを読むと、言い回しが過剰でくどいと私は感じました。三島が熟考を重ねて削ぎ落とした文を再び付け加えている印象を受けたのです。

www.huffingtonpost.jp


言い回しの足し算で文を飾ることが素晴らしいと感じる文化と、無駄を削いだものが美しいと感じる文化。どっちを否定することもなく、どちらも面白いと感じられるような、価値感に幅のある人間になりたいです。それが私の比類なき未来への切なる希望です。(←韓国風)

 

※以前の記事を改稿しました。

オークラ特製フレンチトースト、作ってみた

www.hotelokura.co.jp

フレンチトーストはそんなに好きではありません。
私にとっては、朝ごはんに出される昆布のつくだ煮と同じくらいの扱いで、「あれば食べるけど、率先して作ろう、食べようとは思わない」品でした。
ところがどっこい。先日ふらっと立ち寄った夜の喫茶店で、思わぬ出会いをしました。知人が頼んだフレンチトーストのおこぼれを貰ったのですが、これが当たりだったのです。
卵や牛乳をたっぷり含み、フォークで持ち上げるとだるんとした重みが感じられる生地。力を入れずにはむっとついばむと、食パンの繊維に閉じ込められた液が、口内に滴り落ちてきます。めいいっぱいの甘さと柔らかさを持っているのに、「私ってそんなに悪くないでしょ?」と控えめに尋ねてくる上品さがある。ああ、私はフレンチトーストの味が嫌いなわけじゃなくて、美味しいフレンチトーストに今まで出逢ってこなかっただけなのか。そう思わざるをえませんでした。

食欲という漢字は貪欲という漢字によく似ています。目が悪い人にとってはほとんど同じフォルムに見えます。なにが言いたいかというと、私のフレンチトーストに対する食欲が貪欲に変わるのは、もう仕方のないことでした。もっと美味しいフレンチトーストが食べたい。願いが叶うならば、気持ちが高ぶったときにすぐ食べられる状態にしておきたい。そう考えた私が辿り着いたのが、上のリンクにある「オークラ特製フレンチトースト」のレシピです。
オークラでフレンチトーストは食べたことないけど、名ホテルと名高いオークラのフレンチトーストですもの。姉さん、ゼッタイ美味しいです!(BY高嶋政伸)と思い、作ってみることにしました。

まず、レシピ通りに。食パンは厚切り4切れね。そして卵がろっこ・・・・6個!?
もったいない!と思いましたが、幸いなことに私の冷蔵庫には消費期限が迫っている卵が9個ありました。姉さん、なんというタイミングでしょう。
ではさっそく、卵、牛乳、砂糖、バニラエッセンスを混ぜ合わせたものに食パンを丸一日浸します。片面12時間浸して、時間が経ったらひっくり返すんです。
私の当初の希望、「気持ちが高ぶったときにすぐ食べられる状態」のフレンチトーストはどうやら叶わないようです。まあ仕方がないでしょう。美味しいものを食べるためには犠牲がつきものです。パン生地に液がじわじわと染み込んでいく様子を何度も眺めていると、気持ちが高ぶっていきます。

さて、1日経ちました。フライパンにバターとサラダ油を乗せます。弱火でフライパンを温めたらフレンチトーストを焼きます。蓋をして約15分かけてじっくりと火を通します。そして完成したものがこちら。

f:id:toridoriki:20170321093317j:plain

 

 フライパンの上にあるときは相当な分厚さだったのですが、お皿に移動させるとたちまちしぼんでしまいました。ごまかすために上から撮影しました(笑)。レシピ通りだと砂糖が62gいるんですが、私には少々甘すぎました。45gくらいでいいかなと思います。甘く、噛むと口内に吸いつくしっとりとした食べ心地。ブラックコーヒーとの相性もばっちりです。朝ごはんに食べたい一品って感じでしょう。「あれば食べるけど、率先して作ろう、食べようとは思わない」品が1つ減りました。喜ばしいことです。今度はフレンチトーストに引き続き、「本当に美味しい昆布のつくだ煮」を探して作ってみようと思います。

 

手塚治虫が考えた100年後の宝塚

「ぼくの かんがえた さいきょうの ○○」

というネットフレーズが流行したのはいつのことだったでしょう。
何の生産性もない、しょーもない機能を持つマシンや魔法呪文を妄想・発想することをヤジる(時に自虐する)ためのフレーズです。
しかし、この非現実な妄想で多くの人にロマンや、夢や、楽しみを与えた人もいます。
漫画家・手塚治虫です。
彼にとっての
「ぼくの かんがえた さいきょうの みらいロボット」が鉄腕アトムであり

「ぼくの かんがえた さいきょうの おいしゃさん」がブラック・ジャックなのはもう、言うまでもないでしょう。
さて、その手塚治虫は、初恋の人がタカラジェンヌで、家が伝説のタカラジェンヌ天津乙女の隣だったこともあるという生粋のヅカファンです。「リボンの騎士」なんてのは、もう主題が宝塚になってしまっているほど。だからやっぱり存在していました。「ぼくの かんがえた さいきょうの たからづか」が。

彼は昭和22年6月20日発行「宝塚グラフ復刊第3号」に、「T党3人娘 百年後の宝塚見物」という1見開きのイラストを寄稿しています。未来の宝塚歌劇を楽しんでいる女子3人組が登場し、そこにちょっとしたコメントを添えています。昭和22年(1947年)から100年後だから2047年ですね。手塚治虫が想像した2047年の宝塚を覗いてみたいと思います。今その世界が達成されているものや、手塚治虫の想像以上に発展しているもの、おそらく実現不可能なものがあって興味深いですよ。

1 .桜のトンネル 大温室ですから1年中咲きます。

イラストでは、3人組の女の子が桜並木の下をくぐって入場しています。どうやら桜は昭和22年に植樹された模様。大劇場へ向かう「花の道」が温室になっている設定で、桜は年中咲くとのこと。管理が大変そうですね。

2.切符の横流しはゼッタイにありません。
今はチケットを購入する際にネットや電話を駆使しますが、昔は並んでチケットを取っていたので、チケット売り場のお姉さんによる「良い席のチケット横流し」が問題になっていたのでしょう。手塚治虫はチケット売り場のお姉さんをロボットにすることで、どの人にも公平に席が分配される仕組みを導入しています。この場合、「関係者席」は横流しの対象になるんでしょうかね?

3.すべりこみで、お化粧のヒマもないときは、このアナへアタマをお入れください。

「自動化粧器」と書かれた看板が設置され、その近くの壁には顔よりも一回り大きい穴が開いています。そして、穴に向かって顔を突っ込んでいる女性の姿が。この穴へ顔を突っ込むと素早く自動で化粧をしてくれるようです。確かに観劇するときは、洋服やら化粧に気合いを入れたいですもんね。出掛ける前って妙に時間がないから、お化粧がその穴で済ませられるのはありがたい。でもその機械頼みの化粧が全然気に入らなかったらどうするんでしょう。「私、チークは入れない主義なのに!」みたいな人や「アイシャドーの色が古くさすぎるんですけど!」みたいな人は利用を控えて早起きしましょう。


4.場内へはこのすべり台で。
ロビーから客席への入口はなく、番号が振られた穴が開いています。この穴から滑って客席へと向かうスタイルが導入されていました。

5.ドアを開けるために場内へ光が入るという心配はない

なぜ4(すべり台スタイル)が導入されたかという理由が判明しました。たしかに上演中にドアを開け閉めされると気が散るというか、舞台に集中できないですもんね。ところで、入場はすべり台ですけど、2階席の人、入口へ辿り着くためにめっちゃ階段登らないといけませんね。だって座席よりも高い位置にすべり台がないと滑れないですし。そして退場に光は関係ないから、普通にドアから出るんでしょうか。なんか微妙な案ですね。


6.自動オーケストラで開幕

これは録音でやるんじゃなくて、楽器に演奏を記録させとくスタイル。大劇場のロビーにあるグランドピアノと一緒。私、これはヤだな。多少トチってもいいから、オケはちゃんとオケであってほしい。


7.2人も3人も座ることを防ぐ仕掛け(下が自動バネ)

私は見たことないんですけど、昔は席の重複が問題になったんですかね。チケット代ケチって1つの席を友達同士でシェアして座っているイラストつきです。でも、下がバネになってるから、2人座っている席は重くて上へ上がらないの。他の席は1人ずつ座っているので、ある程度の軽さがあって上へ浮いています。つまり、2人以上座ると席が沈んで劇が見えないわけです。ナイスアイデア!って言いたいところだけど、今この問題は特に起きてないと思うので実現しないでしょう。つうか、席がバネだとゆらゆらして集中できんわ!そっちのが問題だわ!


8.背景はぜんぶ天然色立体映画
つまり、3D映像やプロジェクションマッピングが導入されている、ということ。これ、ある程度正解じゃないですか。ちなみに私は、背景に映像導入するの好きじゃないんですよね。今の技術で導入しても映像が浮いていて気持ちが冷めるだけだし、大道具美術や背景美術を眺めるのが好きなので。イラストのレビューのタイトルは「グランドショー 宇宙への幻想」でした。壮大だからこれは観たいぞ、藤井先生に頼むしかないな。

9.切符を買えなかった人々へサーヴィス
広場に大きなテレビジョンが設けられ、そこへたくさんの人が集まっています。今上演している作品が、テレビの前で、リアルタイムで視聴できるというわけ。これは実現しているとみなしていいでしょう。映画館でライブ・ビューイングしていますもん。

10.豪華なセット、木などは本物を使います。
セットについては私はよく分からないので割愛させていただく。
 
11.メークアップの発達。ウルサイ楽屋口はしたまま抜ける
出待ちをしているファンが「アレハ○○さんカシラ 道具方カシラ」とつぶやいているイラストつき。ファンが気づかないレベルの化粧技術ってこと?入りや出についてはもはや宝塚の名物とさえいえるレベル。あれを観たい一見さんもいらっしゃるのだから、これは却下で!


12.立体発声スチールブロマイド
スターの立体写真から歌声が流れる。
・・・正直、これ、いる?

13.古代歌劇展(思い出のスタアの写真などを展示している)
これは、まさしくその通りのものがありますね。「宝塚歌劇の殿堂」というミュージアムみたいなものが、劇場に併設されています。

14.大社交室 ここでは本日の公演のダンス教授と歌唱指導
公演の歌と踊りを本格的に学べるってことだと思います。「ファンにタカラジェンヌの気分を味わってもらう」というのが狙いと考えるならば、趣旨としては衣装が着られて、ヅカメイクをしてもらえるステージスタジオに近いかも。

15.かくて感激の一日は終りぬ。
感激は観劇とかかっているのね。ダブルミーニングってやつですね。ちなみにイラストに登場する宝塚が好きな女の子3人組は、東京から宝塚への直通便(飛行機!)に乗ってやってきて、日帰りの設定です。そこは1泊すりゃいいのに。せっかくなんだからさ。

これが手塚治虫が考える未来の宝塚の姿です。項目によっては現時点で達成されていると思えるものもあるし、こりゃ今や需要がないだろと感じるものもありますね。私がいいなと思ったのは、花の道が大温室になってるってとこだけでした。それ以外は別に惹かれなかったです。項目4と5の意味が重複していることと、項目15は特に意味がないことを考慮して全部で13項目で、達成されているのは、3項目。ってことで70年経った現在の達成率はだいたい20パーセントです。

おじじ萌え、ずっきゅん。ロバート・デ・ニーロ

f:id:toridoriki:20170217120721j:plain

 

ロバート・デ・ニーロといえば、「タクシードライバー」や「ゴッドファーザー PARTⅡ」なんかの、殺気立った役が超絶お似合いだから、「マイインターン」でみせた「最初っから最後までめっちゃ善良な老紳士」の役には違和感!みたいな記事をどこかで読みました。
私はその記事に「SAY NO!」を突き立てたい。
だって、「レナードの朝」のデ・ニーロ、めっちゃ最高だったじゃん。パーキンソン病の患者役を熱演し、好きな女性とダンスを踊るシーンでは、多くの人を感動させたじゃん!
つまりデ・ニーロは凶悪な役以外でも、なんでもできちゃうんである。なんだって最高なのである。

さて、映画「マイ・インターン」は、通販サイトの運営で成功を収めたアン・ハサウェイの部下となったロバート・デ・ニーロを愛でる映画です。要素はそこしかありません。究極のおじじ萌え映画です。

現在テレビ東京で放送中の「バイプレイヤーズ」が、おじじ萌えドラマとして話題を集めていますよね。6人の激渋脇役がテラスハウスみたいに共同生活するドラマ。正直言って脚本はクソですが、この設定に完敗した私は毎回観るのを楽しみにしています。
ロケ地となった館山のゲストハウスを調べちゃうくらいのハマりっぷり。

www.agriplan.jp

推しはお料理上手の松重さんです。一緒にジャム作り、ロールケーキ作り、タケノコ掘りしたい!

しかし、この松重さんよりも私のおじじ萌え心をくすぐるのが、マイ・インターンロバート・デ・ニーロが演じるベン・ウィテカーさんです。

アン・ハサウェイ(役名忘れた)の会社のシニア・インターンとして働くことになったベン。出社前は胸がどきどき。鏡の前でメイソンピアソンの櫛https://www.masonpearson.jpを持ち、ロマンスグレーの髪を念入りにセッティングするのです。乙女のように。はい、ここでとりあえず萌えポイント10万点です。

次の萌えポイントは出社後、自分の席についてから。通勤鞄(1973年・エクゼクティブモデルの革のアタッシュケース/廃盤)から、愛用の仕事道具を取り出すんですけど、この小物のセンスがまた良いのです。
会社から支給されているMacBookのすぐ右隣にはBRAUNの目覚まし時計を配置。これの黒色です。http://www.br-time.jp/contents/products/bnc00/

そんで、時計の近くにはスケジュール帳と恐らくメモ帳。どちらも革のカバーつきね。茶色とワイン色の間みたいな、渋くて良い色です。
パソコンの左側には眼鏡ケース、ペンケース、カシオの電卓を一列に揃えてスタンバイ完了です。サムスンガラケーと万年筆2本(ブランド分からず)もここに置いてます。

いよいよ仕事に取りかかります。まずはメールチェックから。しかしガラケー使いのベンは、Macbookの起動の仕方が全然分からない。右隣の席の同僚(若者)が「ここ押すんだよ」と教えてくれます。これを真似っ子してパソコンを起動させるベン。とっても嬉しそう。あああああ、かわいいですねぇ。2000万点ですね。
しかしそんな健気なベンに対して上司のアン・ハサウェイはちょっとよそよそしいんです。そこでベンは、その日の夜寝る前に、アン・ハサウェイの気分を害さないような挨拶を繰り返し練習します。「Hi・・・違うかな・・」みたいな。このシーン、パジャマなこともあり、私の中では100万点です。
さて、いろいろあって仲良くなったベンとアン・ハサウェイ。残業中、気分転換がてらベンのFacebook登録をアンが手伝ってあげることに。まずはプロフィール写真を撮ります。「ハイ!」とアンがカメラを向けた瞬間のロバート・デニーロの、不自然で引きつった笑顔のかわいさといったら!もうもうもうもう!目尻に出来た皺さえかわいい。鼻血がとまりません。無論、1億点ですね。(この記事の画像がそのシーンです)。

物語の中盤にして、私のおじじ萌えポイント1億2110万点をたたき出す威力。ロバート・デ・ニーロの底力を感じます。

 しかし、ベンはただのかわいいだけの男ではありません。かっこいいこともちゃんと言います。

 

・ハンカチっている?必要なくない?と言われた時の一言

「ハンカチは必需品だ、知らないのは罪だぞ。ハンカチは貸すためにある。女性が泣いたときのため。紳士のたしなみだ」

 

は〜い、完敗完敗。ベンに完敗です。 

クソかわいい悪役 クリストフ・ヴァルツ

 

f:id:toridoriki:20170201045529j:plain

 

小さい頃は正義の味方が大好きだったけれど、あるとき悪役に魅力を感じるようになった。それに気づくと同時に、私の青春はとっくに過ぎていたと悟った。

私は正直者ではないし、嘘もつく。正しいことばかりしてきた人間じゃない。人を裏切ったことがあり、そのときの後ろめたさを今でもしばしば思い出す。10代後半までは、正義の味方のような生き方をすると思っていた。しかし、20代に入って自分の脆さが明らかになると、私は100パーセント善人ではないことを思い知る。悪役や脇役にぐっと心が惹かれるのは、私が大人になったと自分で気づいてしまったからだろう、おそらく。人に対してやましい思いを抱えたまま、正直者に憧れる自分のみじめったらしさに打ちひしがれているとき、映画に出てくるぶっ飛んだ数々の悪役は、私に希望をくれた。


中でもお気に入りなのは、クリストフ・ヴァルツが演じる悪役だ。愛され度ナンバーワン・悪役界をしょって立つ、スーパーアイドル。彼の演じる悪役はそんなキャラばかり。007シリーズ「スペクター」ではフランツ・オーベルハウザー(ブロフェルド)という、ジェームズ・ボンドと血のつながらない兄弟かつ悪の親玉を、実話を元にしたティム・バートンの作品「ビッグ・アイズ」では妻の絵を自分が描いたと主張し、執拗に妻をおいかけるキ○ガイ、ウォルター・キーンを熱演。

私が一番好きなのは、タランティーノ作品「イングロリアス・バスターズ」で演じたナチスの親衛隊将校・ハンス・ランダというド級のクズ。
悪どくて、容赦なくて、自分中心で、本心が読めない。そしていっつもニコニコしているんだけど、突拍子もなく真顔になって相手をドキっとさせる。絶対に賢いのにバカっぽいのもいい。「道化」ってやつである。

 

www.youtube.com

 

このシーンが最高。

「うぅ〜♪ざっつ あ びんご〜!」とウキウキ言ったあと、身体をふりふりし、眉を少し上げてみせたと思ったら、いきなり眉を寄せて
「ところで(英語で)that's a bingoって表現で合ってる?」ってブラピに尋ねる。
「ビンゴだけでいいよ」とブラピ(敵役)に教えられると、超嬉しそうに
「っびんごぅ〜!超たのし〜!」って言うのだ。

かわいい、超かわいい。悪役で憎むべき存在なのに、こんなにも愛おしい。
世の中には少数ながらクズでしょうもないのに許される奴というのが存在する。他人に迷惑をかけまくってるのに、なぜか愛されるのだ。もちろん彼らも痛い目には合っている。私は、こういう人には憧れないし、今でもなれるものであれば、正直に、全うに生きていきたいと思うけれど、それでも、クリストフ・ヴァルツが演じるような愛されるクズ(もちろん犯罪はダメだけど)に、ちょっとだけでもいいから寛容さを持って生きていきたい。それが正義の味方でなくなった、今の私の目標だ。

春日野八千代が白薔薇のプリンスになるまで[改]

「伝説のタカラジェンヌは誰か」

そんな質問を投げかけられたら、ヅカファンは何と答えるだろう。
大地真央天海祐希
最近であれば柚希礼音もレジェンドと呼ばれている。
麻実れい越路吹雪も伝説のスター扱いを受けるかもしれない。 

宝塚を観ていると「10年に1度の逸材」という言葉を4、5年に1回くらい耳にする。
しかし100年に1度というフレーズは、なかなか聞かない。
私はそんなにずっぷり宝塚に浸っているわけではないけれど、春日野八千代花總まりのことを表現する際に、そのフレーズは使われているように思う。

 

春日野八千代のプロフィールを紹介すると以下の通りだ。

大正4年(1915年)11月12日生まれ、兵庫県神戸市出身。昭和3年(1928年)に宝塚音楽歌劇学校へ入学し、翌年に初舞台を踏む。昭和8年(1933年)に星組主演男役、昭和11年(1936年)に雪組主演男役、昭和13年(1938年)に花組主演男役を経験。「白薔薇のプリンス」「永遠の二枚目」とコピーがつく伝説的な二枚目男役だった。愛称はヨッちゃん。平成24年に96歳で死去。 

「ヨッちゃん」は映画が大好きな子どもだった。トーキー(音声映画)が日本で根づきはじめたのは昭和に入って少し経ってからだから、たぶん活弁士がついたサイレント映画を観ていたと思われる。チャップリンのコミカルな動きを真似していた姿が、なんとなく目に浮かぶ。

彼女が宝塚を目指そうと思ったのは13歳のとき。父親から宝塚の話を聞いたのがきっかけだった。今の音楽学校受験生ならば、宝塚受験スクールに通い、バレエなり声楽なりを学ぶんだろうが、時代が時代なので、ヨッちゃんはそんなことはしなかった。彼女の受験対策は、父親が買ってきた「世界文学全集」を貪り読んで感受性を高めることであった。そんなこんなで宝塚受験に挑んだヨッちゃん。周りは自分よりも背が高く、美人ばかり。本人も親族も落ちると思っていた。

「成績不良につき今後もよく勉学に精を出されたし」

昭和3年、ヨッちゃんはそんな注意書が添えられた宝塚への合格通知を受け取った。
入学後、授業中は寝てばかり。仲良しの同期は冨士野高嶺(元男役スター)で、一緒にかっこいい男役の先輩を見て「あんな男役になりたい」ときゃっきゃ騒いだ。しかしヨッちゃんはまだ13歳で身長が低い。「あんたみたいなチビが(笑)」と鼻で笑われ、娘役としてキャリアをスタートさせる。ちなみ当時から、お顔立ちが非常に綺麗だと周囲から認められていたようだ。だからこそ「綺麗すぎるし、線が細い」と評価され、娘役での抜擢が続いた。

そんなヨッちゃんが麗しの白薔薇となったのは昭和8年(1933年)の「巴里ニューヨーク」から。身長が伸びたので燕尾服姿がサマになっており、綺麗だし度胸もたっぷりあったので、男役がばっちりはまった。男役デビュー後1年足らずで主演男役になっている。すごい出世である。

 

今の男役の勉強方法は、先輩の所作や街中の男性、ハリウッド映画男優を映像で観て参考にしていると思うんだけど、春日野御大は歌舞伎を観たり「日本の芸談」(平山 蘆江著)を読み込んで勉強している。

ちなみにこの「日本の芸談」、近代デジタルライブラリーになっている。

http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1142446

ちょっと読んでみたが、とても興味深い内容だ。私は芸事をやっていないけど、今の役者さんが読んでも参考になるんじゃないかな。

例えば「足のはこび」の項目はこんな内容だ。
女形は足のはこびに爪先を強くつかへば、気性の強い女形となり、男役は踵を強く踏みしむればしっかりした男の性根が見える。
 助六だの、五郎だの、梅玉だのといふいわゆる荒事の役は膝をまげずに足を大きく挙げて踵からどすんどすんと強くひきつけるようにしてあるくので踵に入れる力がゆるめられるほど、役柄がやさしくなり、足全体をしずかに下ろすという歩き方をするほどになれば、一番穏やかな人物が現されてくるわけだ。女形でも爪先を強く踏むのが勝ち気な女で、爪先にこもる力が足のうらへ平にあたるにつけてやさしい人柄が見えてくると思えばよい。』

これは歌舞伎に限ったことではないはずだ。歩き方ひとつで役の性格が表現できる、というのは、なるほど確かにそうだなと思う。

「日本の芸談」については、今後もっと読み込んで何かの機会にまとめて感想を書きたい。

 

 

参考文献

タカラジェンヌに栄光あれ」和田克巳/神戸新聞出版部/1965年

「日本の芸談」平山 蘆江/法木書店/1941年

※以前の記事を改稿した。